角文平「記憶のボリューム」

　アートフロントギャラリーで、角文平による個展「記憶のボリューム」が開催されている。

　本展では、長年使われた物には魂が宿るとされ「付喪神」として神格化される古来の日本の思想に着想を得た「記憶」シリーズに焦点を当て、新作を中心としたインスタレーションを展示。これまで木製の古道具や遊具などの物体をモチーフに、道具に宿る記憶を表現してきた「記憶」シリーズが、今回の展示で新たな展開を迎えたという。

「Room1」では、人の記憶を可視化するインスタレーション「記憶の被膜」シリーズを紹介。バルーン状の頭部を持つ人型作品の内部には、過去の体験や記憶を想起させる仕掛けが施され、個人の内面世界と記憶の構造を象徴的に表現している。

　また「Room2」では、土地・環境に根差した記憶への拡張を表現した「野生の記憶」シリーズを見ることができる。これまでの「記憶」シリーズの延長線上にありながら、新たな素材として「土」を取り入れ、土地や環境に根ざした記憶へとテーマを拡げたものとなっている。

　角の作品が問いかけるのは、物に宿る時間、人や場所に蓄積された記憶、そしてそれらに向き合う人々の感覚である。本展を通じて、記憶と物質が織りなす空間を体感してほしい。