2025.8.21

「前橋国際芸術祭 2026」が初開催へ。アートで目指す都市再生

前橋国際芸術祭実行委員会(実行委員長:小川晶前橋市長)は、2026年9月19日から12月20日にかけて、群馬県前橋市で新たなアートの祭典「前橋国際芸術祭2026」を開催する。

文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

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 いまアートによって注目を集める街、群馬県前橋市で新たな芸術祭(ビエンナーレ)「前橋国際芸術祭2026」が立ち上がる。

 中心市街地の衰退が続いていた前橋は、2016年に未来に向けたまちづくりビジョン「めぶく。Where good things grow.」を策定。その後、官民が一体となって川沿いの親水空間やアーケード商店街の再整備に取り組み、水と緑と現代建築の街へと変貌を遂げた。また美術館「アーツ前橋」が位置するほか、廃旅館を再生したアートホテル「白井屋ホテル」が2020年に開業。また23年には複数のギャラリーとレストラン、住居が一体となった複合施設「まえばしガレリア」がオープンするなど、アートによる地域活性化が目覚ましい。

⽩井屋ホテル外観
まえばしガレリア

 「めぶく。Where good things grow.」策定から10年を契機とし、新たに始まるのが、前橋国際芸術祭だ。

「都市再生の物語そのもの」

 前橋の小川晶市長は、今回の芸術祭について次のように意欲を見せる。「『めぶく。』というまちづくりのビジョンを具現化するものであり、新しい文化の芽を芽吹かせられるかという挑戦。多くの地方都市が中心市街地の衰退という課題に直面しているが、前橋はその衰退から一歩ずつ抜け出してきた。この芸術祭はアートと建築を軸に、市民や関係者が主役となりアーティストとともに街を育て未来を描く、都市再生の物語そのものだ」。

サポーズデザインオフィス設計のばばっかわスクエア

 総合プロデューサーを務めるのは、群馬出身で前橋の街づくりに尽力している田中仁(田中仁財団代表理事/ジンズホールディングス代表取締役CEO)。アドバイザーには南條史生(アーツ前橋特別館長/前橋市文化芸術戦略顧問)、萩原朔美(前橋市文化活動戦略顧問)、松田文登(ヘラルボニー代表取締役副社長)、牧寛之(バッファロー代表取締役社長)が名を連ね、プログラムディレクターは宮本武典(東京藝術大学准教授/アーツ前橋チーフキュレター)が担う。アンバサダーは和田彩花。

 主な会場となるのは、アーツ前橋、前橋文学館、まえばしガレリア、前橋市のまちなかだ。

 例えば渋谷慶一郎は、アーツ前橋やオリオン通り商店街に社会実装するプロジェクトを実施。吉開菜央は、赤城山から吹き下ろす強風「からっ風」をテーマに新作映画を撮り下ろす。詩人の最果タヒは、《詩のホテル》でコラボレーションしたデザイナー・佐々木俊と再びタッグを組み、前橋市内でパブリック・アートを設置。石倉敏明と尾花賢一は、アーツ前橋で2019年に発表した《赤城山リミナリティ》の続編を発表予定となる。また「新しい価値観」をコンセプトに、独創的なプロジェクトを次々と⼿がける注⽬の建築家・⼭⽥紗⼦は、アーケード商店街の⼀⾓に再開発の起点となる建築を設計中だ。

参照作品 最果タヒ 詩の加速 2020
石倉敏明と尾花賢一による構想中の作品イメージ
オリオン通りで進⾏中の建築プロジェクト(イメージ)

 なお、全アーティストとプログラムのラインナップは26年6月頃に発表予定。アートによって大きく変わりつつある前橋が、この芸術祭によっていかなる展開を見せるだろうか。