2025.10.15

「下村観山展」が来年3月に開催。単眼鏡を用いた新たな鑑賞体験も

東京・竹橋にある東京国立近代美術館で「下村観山展」が開催される。会期は2026年3月17日〜5月10日。本展開催に先行して、出品される2点が発表された。

文・撮影=大橋ひな子(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より、下村観山《唐茄子畑》(1910)を単眼鏡で鑑賞する様子
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 東京・竹橋にある東京国立近代美術館で「下村観山展」が開催される。会期は2026年3月17日〜5月10日。担当学芸員は中村麗子(東京国立近代美術館主任研究員)。今回展覧会に先行して、本展に出品される2点が発表された。

 日本画家・下村観山(1873〜1930)は、紀伊徳川家に代々仕える能楽師の家に生まれた。幼いときより画の才能を発揮し、橋本雅邦に学んだのちに東京美術学校(現・東京藝術大学)に第1期生として入学。卒業後は同校で教鞭を執るも、校長の岡倉天心とともに同校を辞職し日本美術院の設立に参加する。岡倉の指導や、1903年からの2年間のイギリス留学・欧州巡遊などから技術力を磨き、横山大観、菱田春草らと新しい日本美術の道を拓いた。

 本展は、関東圏では13年ぶりとなる大規模な観山の回顧展となる。観山作品のなかで唯一重要文化財に認定されている《弱法師》を含む、全150点を超える作品から観山の画業をたどる内容となる。超絶技巧で知られる観山だが、そのモチーフや和洋折衷の不思議な表現方法も特徴のひとつとなっており、改めて作品制作の背景を紐解き、観山芸術の意義を再検証する点も本展の見どころとなっている。

 さらに今回、大英博物館が所属する、観山の英国留学時代の作品が初めて日本に里帰りを果たす。同じ主題で描かれた作品でも、海外向けに描かれたものと国内で描かれたものが比較できるかたちで展覧されることで、観山が考えた「日本画のあり方」にも迫る構成となる。

 また本展では、狩野派、大和絵、琳派、中国絵画、西洋絵画といった様々な絵画技法を学び制作に活かした観山の「超絶筆技」を味わうために、新しい試みとして、株式会社ビクセンによる「アートスコープ」という単眼鏡を使った鑑賞体験(有料貸出)が可能となる。そのため、圧倒的な技術力の高さで知られる観山作品を隅々まで鑑賞することができる。実際に事前公開された《木の間の秋》(1907)や《唐茄子畑》(1910)を単眼鏡で覗き込むと、それぞれのモチーフの細部まで克明に描かれていることがわかる。担当学芸員の中村曰く、「単眼鏡を用いて、あえて視野を狭めることで新たに見えてくることもある」。

展示風景より、下村観山《唐茄子畑》(1910)を単眼鏡で鑑賞する様子
展示風景より、下村観山《木の間の秋》(1907)

 また今回音声ガイドのナビゲーターには俳優・松平健が就任することが決定した。単眼鏡での鑑賞に加えて、音声ガイドを用いることで、より深く観山芸術の世界観に没入することができるだろう。なお本展は、和歌山県立近代美術館も巡回する(2026年5月30日~7月20日)予定だ。