2024.12.20

「動き出す浮世絵展 TOKYO」(寺田倉庫G1ビル)開幕レポート。五感で体感する浮世絵の魅力

東京・天王洲の寺田倉庫G1ビルで、デジタルアートを通して浮世絵に親しめるイマーシブ・ミュージアム「動き出す浮世絵展 TOKYO」が開催される。会期は12月21日〜3月31日。

文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

展示風景より
前へ
次へ

 東京・天王洲の寺田倉庫G1ビルで、浮世絵を題材としたデジタルアートミュージアム「動き出す浮世絵展 TOKYO」が開催される。会期は12月21日〜3月31日。

展示風景より

 本展は、葛飾北斎歌川広重といった浮世絵師たちの名作300点以上をもとに、3DCGアニメーションやプロジェクションマッピングなどの最新技術で再現された空間を体感型のデジタルアートミュージアム。これまでに名古屋、ミラノ、鹿児島と国内外で開催されてきたものが東京に巡回したものだ。

展示風景より

 会場は「藍」「眺」「彩」「麗」「遊」「瀧」「錦」「豪」「雅」の9つの立体映像空間を用意。それぞれ、異なるコンセプトで浮世絵の世界に没入できる。

 例えば「藍」の空間では世界的に知られる葛飾北斎《神奈川沖浪裏》の波の表現を中心に、歌川国芳の《龍宮玉取姫之図》や歌川広重《広重魚尽》などのモチーフを組み合わせて構成。波や海のイメージを様々な浮世絵のコラージュのような空間で体感することができる。

展示風景より

 「麗」の空間は、美人画に革新をもたらした喜多川歌麿や、幕末に庶民から圧倒的な支持を得た歌川国貞など、細やかな仕草と華やかな着物を表現した美人画をモチーフにした空間だ。布の質感や顔の輪郭を表現する豊かな線が、大画面のなかで躍動する。

展示風景より

 「遊」の空間は、子供から大人までが体験を通して江戸の浮世絵に込められたユーモアや想像力に触れられるコーナーだ。裸の男たちが集まって人物の顔をつくる国芳の《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》などをディスプレイ上で組み上げるコーナーのほか、輪投げに釣りといった古くから愛されてきた遊びをここでは体験できる。

展示風景より

 クライマックスとなるのは「雅」の空間。中心に据えられたテント状の立体物が様々な浮世絵のモチーフへと変化する。とくにこの形状を活かしているのが葛飾北斎の『富嶽三十六景』の《凱風快晴》や《山下白雨》に代表される、浮世絵のなかの富士山の表現だ。日本の象徴である富士山が、日本を象徴する美術である浮世絵と重なり合う。

展示風景より

 なお、会場ではイマーシブシアターによる展示のほかにも、本展でモチーフとされた浮世絵師たちを、原作版画を見ながら知ることができる展示もある。体感しながらも、浮世絵に親しむことができる展覧会だ。