2025.3.5

「第18回shiseido art egg」展(資生堂ギャラリー)が開幕。第1期は大東忍の個展「不寝の夜」

資生堂ギャラリーで「第18回 shiseido art egg」展が開幕。この公募プログラムに入選した大東忍、すずえり、平田尚也の3名のうち、第1期となる大東忍の個展「不寝の夜(ねずのよる)」がスタートした。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より
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 東京・銀座の資生堂ギャラリーで、資生堂による新進アーティストを応援するための公募プログラム「shiseido art egg」の第18回展が開幕。この公募プログラムに入選した大東忍、すずえり(鈴木英倫子)、平田尚也の3名のうち、第1期となる大東忍の個展「不寝の夜(ねずのよる)」がスタートした。会期は4月6日まで。

 大東忍は1993年愛知県生まれ。愛知県立芸術大学美術研究科博士前期課程油画・版画領域を修了し、現在は秋田県在住。見知らぬ過疎地や住宅地を歩きながら祖先を供養する「盆踊り」を踊ることで、そこに佇む気配を読み取り、その風景に残る人々の営みや在処について探究する作家だ。昨年は「VOCA展2024」大賞を受賞。その際のインタビューはこちら

大東忍

 同展では、大東作品のメインとも言える木炭画に加え、映像や写真作品の新作が、天井高のあるギャラリー空間を生かしながら展示されている。

 大東は、自身が風景を描くこととなったきっかけのひとつに次のような理由を挙げている。「祖母の住む限界集落に、突如ソーラーパネルが設置されることになりました。もちろん土地の風景は一変。そのような出来事があってから、風景を描くことを通じて、人の営みの痕跡をとらえ、供養をしようとしています」。また、夜の風景を描くのは「その痕跡がより一層露わになるから」であるとも大東は語る。タイトルの「不寝の夜」には、そういった意味が込められているのだ。

展示風景より

 作品によっては、街灯などの灯りのそばで「盆踊り」を踊る人影が描かれていることにも気がつくだろう。これは、大東自身が実際に踊りながら風景の供養を行っている様子でもある。集中して踊りながら耳を澄ますことで、その風景に向きあっているのだ。

展示風景より

 そして、個人的に今展でもっとも目を引いたのは、雪が深々と降り積もる風景を描いた新作だ。「ものの影と同じく、雪はすべてを等しく覆い隠し、曖昧にする」と語る大東。夜の風景を描く大東作品のなかでも明るい作品でもあり、グレーの諧調の美しさが際立つ。

展示風景より

 映像や写真の作品にも注目したい。灯りを人の在処や営み、そして祈りであるととらえる大東は、自身にそれを灯すことで夜の風景のなかに溶け込んだ。壁に投影された作品にはその姿と、風景の声を書き出した歌詞があわせて映し出されている。

展示風景より

 一見ドローイングのようにも見受けられるこれらの作品は、夜の風景のなかに灯りの粒を投げ込んだスナップショットだ。長い時間をかけて描いていく木炭画とは対照的ではあるものの、ざらざらとした紙にプリントされたこれらの写真は、木炭画特有の粗さや曖昧さとも呼応しているように感じられた。

展示風景より
展示風景より

 会場はぼんやりと薄暗く、そのなかにいくつものグレースケールの風景が立ち現れている。大東が描くその風景、そして絵をまじまじと見る鑑賞者たちの影もその絵の上に重なり、すべてが溶け込んでいくような空間となっていた。