2025.4.5

「黒の奇跡・曜変天目の秘密」(静嘉堂@丸の内)開幕レポート

静嘉堂文庫美術館で、「黒の奇跡・曜変天目の秘密」がスタートした。会期は6月22日まで。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より、
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 東京・丸の内の静嘉堂文庫美術館で、「黒の奇跡・曜変天目の秘密」がスタートした。会期は6月22日まで。担当学芸員は山田正樹(静嘉堂文庫美術館 学芸員)。

 中国陶磁の至宝である《曜変天目》は、12~13世紀の南宋時代につくられ、世界に3点のみ現存。そのすべてが日本に伝わり、いずれも国宝として各地に収蔵されている。その漆黒の釉薬に浮かぶ虹色の光彩は不思議な美しさを放ち、いまなお多くの人々を魅了し続けていると言えるだろう。しかし、製法や伝来などは未だ謎なままだ。

 本展では、「工芸の黒い色彩」をテーマとして、刀剣や鉄鐔など「黒鉄(くろがね)」とよばれる鉄の工芸品や「漆黒」の漆芸品を全4章にわたって紹介。そして中国と日本の黒いやきものの歴史をたどりつつ、最新の研究成果をもとに、曜変天目が持つ様々な謎にせまるものとなっている。

 まず1章となる「天目のいろいろ」では、室町時代の足利将軍家に伝わる中国産の天目茶碗「唐物天目」の優品が並ぶ。当時は、これらの唐物天目から将軍家が用いるのに相応しい品々を選定するために格付を行い、「曜変」をはじめとした「油滴(ゆてき)」「建盞(けんさん)」「鼈盞(べっさん)」などの分類で整理された。ここでは、それぞれの分類やその特徴を表す作品が展示されている。

「天目のいろいろ」展示風景より。唐物天目の格付については、室町時代に相阿弥や能阿弥が記録した座敷飾りの伝書『君台観左右帳記』に記載されている
展示風景より、《油滴天目 付属 花卉文堆朱天目台》(南宋時代、重要文化財)

 2章「黒い工芸─漆黒のつやと黒鉄のかがやき」では、その名の通り「黒い工芸」として漆や黒鉄を用いた工芸の優品を紹介。例えば、古来より精製されてきた黒い漆は、油煙や松煙から発生した煤(すす)を加えて生み出されたが、近年では生漆に鉄粉を混ぜ、化学反応によって黒変させる手法が採用されている。双方の風合いの違いにも注目してほしい。

展示風景より、清水九兵衛《浪月蒔絵硯箱》(17世紀)

 また、刀剣においては茎(なかご)や鐔(つば)に見受けられる黒さびが見どころだ。酸化被膜によって発生するこのさびは鉄の内部を腐食から守る働きがあるとともに、「鉄味」と呼ばれる独特な風合いが生み出されるのだという。こちらの味わい深い「黒」も見どころだ。

展示風景より、《刀 銘 源清麿/弘化丁未年八月日 附 小倉巻柄半太刀拵》(1847、重要美術品/拵: 19-20世紀)
展示風景より、石黒是美《花鳥図大小鐔・三所物》(19世紀)

 そして、もっとも広いスペースで展開される3章「天目と黒いやきもの」では、中国古代の黒陶から宋・元時代の天目茶碗を代表とする黒釉陶磁、そして日本にも伝わる黒い釉薬を用いずに製作された清時代の工芸品など、「黒いやきもの」のルーツを紹介。時代のなかで発達する技術と、そこから新たに生まれる表現の在り方を俯瞰することができるだろう。

展示風景より、野々村仁清《色絵吉野山図茶壺》(17世紀、重要文化財)
展示風景より、《三彩足噛馬》(7-8世紀)

 最後の4章「曜変天目の小宇宙」では、同館が誇るコレクションのひとつ《曜変天目》が公開。独自の展示ケースでは、底部分まで見える仕様となっているため、360度すべての角度からの鑑賞することが可能だ。

 《曜変天目》がどのように生まれ、伝来してきたかについては未だ謎が多い。しかし、周縁の「黒いやきもの」のルーツをたどり、その製法や伝来の仕方を知ることで、類似点を探ることはできるはずだ。そこに本展の意図がある。

展示風景より、《曜変天目(稲葉天目)》(12-13世紀、国宝)

 なお、会期中には、より深い鑑賞を楽しむためのギャラリートークやスライドトークが実施されるほか、毎週木曜日はおしゃべりをしながら鑑賞可能な「トークフリーデー」も設けられている。ミュージアムグッズには新商品が登場したほか「曜変ファッション割」も行われているため、展覧会とあわせてチェックしてほしい。

静嘉堂文庫美術館 ミュージアムショップ