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2025.10.31

奈良美智と加藤泉の立体作品、京都・福田美術館に設置。現代美術コレクション拡充の第一歩に

京都・嵐山にある福田美術館が、新たな取り組みのスタートとして、奈良美智と加藤泉の屋外彫刻を設置した。

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

奈良美智《Long Tall Peace Sister, 2024》(2024)の展示風景
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 京都でも有数の観光地・嵐山。ここに位置する福田美術館が、新たな取り組みをスタートさせた。

 2019年に開館した福田美術館は、琳派から始まり、円山応挙や長澤蘆雪などの円山四条派、伊藤若冲や与謝蕪村、近代の竹内栖鳳上村松園ら京都画壇まで、京都にゆかりのある作家の日本画を中心に、約2000点を所蔵する美術館として知られる。24年には、若冲の新発見絵巻《果蔬図巻》を公開し、大きな話題を集めたことは記憶に新しい。

 この福田美術館が新たに収蔵・公開したのが、いずれも屋外となる奈良美智《Long Tall Peace Sister, 2024》(2024)と、加藤泉《Untitled 》(2023)の2作品だ。

 奈良の《Long Tall Peace Sister, 2024》は、奈良が近年手がける大型立体作品のひとつ。高さは236センチにおよぶブロンズ製で、全身が白いウレタンによって覆われており、金属の重量感をまったく感じさせない柔らかな印象を与える。

奈良美智《Long Tall Peace Sister, 2024》(2024)の展示風景

 同作はこれまで別エディションがBLUM(ロサンゼルス)およびアムステルダム彫刻ビエンナーレにて展示されてきたが、本作は福田美術館のために制作されたエディション。日本では初公開となり、奈良の彫刻が関西の美術館で常設されるのもこれが初めてだ。

奈良美智《Long Tall Peace Sister, 2024》(2024)の展示風景

 いっぽう加藤の《Untitled》は、石を型取りしてアルミで鋳造し、それを積み上げ、そこに加藤自ら直接ペインティングを施したもの。2023年に「Gallery Restaurant 舞台裏」で初披露された。加藤の立体作品が関西の美術館で常設展示されるのはこれが初めてとなる。

加藤泉《Untitled 》(2023)の展示風景

 加藤は本作に対して、次のようなコメントを寄せている。「福田美術館のコレクションや展覧会をされてきた日本の古美術作品から、時間を経て現代につながる作品として嵐山という風光明媚な土地に設置されることは大変光栄です。それらの作品は当時のコンテンポラリーアートであったわけなので、僕の作品が現代における真摯的な作品として同じ時間軸上で見てもらえることは楽しみです」(リリースより)。

 ではなぜ、日本美術を軸にした福田美術館が現代美術を収蔵・展示するのか?

なぜ現代美術?

 同館館長・川畑光佐は、現代美術の収蔵について、以下のようなコメントを寄せている。

「近年、世界で活躍する日本人のアーティストが増え、名だたる美術館で数々の展覧会が開催されています。こうした流れをふまえ、当館でも日本人アーティストによる現代アートを新たにコレクションに加えることにいたしました。これにより、近世から現代に至る日本美術の変遷を一望でき、より深い理解を持っていただけると考えております」。

 同館はすでに奈良・加藤の平面作品も収蔵しており、2027年をめどに現代美術の展覧会を開催するという。加えて今後、若手アーティストの支援に取り組むことも明らかにした。

 さらに同館は江戸絵画のコレクションもさらに充実させるとともに、コレクション対象を鎌倉時代の作品にも広げるという。

 なお同館は2026年、昭和100年記念「あの頃は」(2026年1月31日〜4月12日)、「若冲にトリハダ!野菜もウリ!」(4月25日〜7月5日)、「幸せになりたい!ー祈りの絵画ー(仮)」(7月18日〜9月6日)、「人のすがた・愛のかたち -最古の春画「稚児草紙」初公開-(仮)」(9月19日〜2027年1月17日)の開催を予定。

「若冲にトリハダ!野菜もウリ!」では、《果蔬図巻》のほか、新収蔵した《老松白鶴図》を初公開。「人のすがた・愛のかたち -最古の春画「稚児草紙」初公開-(仮)」では、14世紀初めに制作された現存最古の春画とされる《稚児草紙》(醍醐寺旧蔵)を初公開する。

記者会見にて展示された《稚児草紙》(部分)