EXHIBITIONS

エルズワース・ケリー

2025.03.22 - 05.10

Four Horizontal Color Panels 1968 ©Ellsworth Kelly Foundation, Courtesy Matthew Marks Gallery

 TARO NASUで、エルズワース・ケリーによる個展が開催されている。

「心の目を閉じて目だけで見ると、究極的にはすべてが抽象と化すのです」。アメリカ現代美術における孤高の巨人とも呼ばれるエルズワース・ケリー(1923〜2015) 。ケリーは、ハードエッジ・ペインティングやカラーフィールド・ペインティングの展開に多大な影響を与えた存在として知られている。作品は幾何学的な形状と明確な色彩を特徴としており、自然界の物体を色彩と形態に「分解」して抽象的に表現することに生涯をかけて取り組んだ。

 第二次世界大戦中、「ゴーストアーミー(Ghost Army)」とも称された特殊部隊に配属されたケリーは、戦闘用車両から飛行場、野営地にいたるまでのカモフラージュのデザインとその製作や対独音響欺瞞技術を担当。戦後の1948年から54年はフランスに滞在し、ジャン・アルプの偶然性を制作に取り込む手法やアンリ・マティスの単純化を志向する線に学んだ。これらの経験をもとにしてケリーは、しばしば還元主義的な明快さを有すると言及される独特の抽象的造形を構築していくが、その抽象指向は実社会における観察行為に由来しているという。また、それはケリーの作品における根源的な問題、「図と地」のヒエラルキーからの解放をも目指すものだった。

 本展では、1960年代に描かれたペインティングを含む、コラージュ、ドローイング、写真を含む合計17点の作品を展示し、ケリーの目指したものを多面的に紹介することを試みる。

「私は形を背景から解放し、その形が周囲の空間と明確な関係を持つようにすることに取り組んできました。つまりその形がそれぞれの部分における、そのもののなかで一定の明瞭さと均衡とを備えるように」(展覧会ウェブサイトより)。