マシュー・モナハン、黒瀧藍玖「Reverb Time 60」

　SOM GALLERYで、マシュー・モナハン、黒瀧藍玖による展覧会「Reverb Time 60」が開催される。

　本展は、異なる世代であり、異なる文化的背景を持つモナハンと黒瀧の制作的実践を通じて、現代における彫刻というメディウムの再定義と、制度・記憶・知覚に対する批判的思考の可能性を提示することを意図している。

　マシュー・モナハンは1972年アメリカ生まれ。現在はロサンゼルスを拠点に活動。ミクストメディアを巧みに駆使し、工作用紙やファウンド・オブジェなどの異素材を取り入れながら、彫刻作品を制作している。モナハンは美術史やモダニズムの影響を織り交ぜながら、ギリシャ・ローマ時代の彫像の断片的に想起させる造形や質感を独自の手法で表現。作品には緊張感が漂い、朽ちていくものと耐え残るものという二項対立をとらえながら、時間や美の本質についての省察を観者に促す。また、モナハンの作品は彫刻作品にとどまらず、ドローイングやモノプリントなど、多次元的な表層を持ちあわせた平面作品も発表している。

　黒瀧藍玖は2000年神奈川県生まれ。現在は東京都を拠点に活動。2022年に東京造形大学テキスタイルデザインを卒業。繊維が交差することで立体的な構造が生まれる織物の造形に着眼を得て、手作業を通じた、経糸と緯糸の組みあわせを用いた立体作品を制作してきた。代表作「Human」シリーズでは、鉄の空箱に無数の経糸と緯糸を配置し、そのなかに人間を配置してつくられている。規則的な糸の線で構成されるフレームの中に人間を閉じ込めることで、パターン化された現代社会や人間の思考を浮き彫りにさせる。作品を通じて、空虚な現代社会や黒瀧がとらえる人間の視点を浮かび上がらせ、人々をアルゴリズムからの解放へと導くことを試みる。