2025.5.16

今週末に見たい展覧会ベスト12。「カラーズ」展から「創造と破壊の閃光」、「DESIGN MUSEUM JAPAN展」まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」展の展示風景より、ダン・フレイヴィン《無題(ドナに)5a》(1971)
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もうすぐ閉幕

「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」(東京都庭園美術館

展示風景より

 東京・白金台の東京都庭園美術館で「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」が5月18日に閉幕する。レポート記事はこちら

 ドイツは第二次世界大戦で敗戦後、東西に分断され、共産主義のドイツ民主共和国(東ドイツ)とドイツ連邦共和国(西ドイツ)の2つが成立。以降、1989年のベルリンの壁が崩壊し再統一されるまでその状態は続いた。同展は、この約40年間の社会状況と、そのあいだに制作された西ドイツのグラフィックデザインの様相を俯瞰するものとなる。

 今回出展されている作品は、デュッセルドルフ在住のグラフィックデザイナー、イェンス・ミュラー&カタリーナ・ズセックによって収集された「A5コレクション デュッセルドルフ」であり、日本初公開。戦後西ドイツのグラフィックデザイン資料のなかから「幾何学的抽象」「タイポグラフィ」「イラストレーション」「写真」の観点で選ばれたポスターを中心に、冊子や雑誌など多彩な作品が全5章立てで展示されている。

会期:2025年3月8日~5月18日
会場:東京都庭園美術館
住所:東京都港区白金台5-21-9 
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1400円 / 大学生(専修・各種専門学校含む)1120円 / 中高校生・65歳以上 700円

 「ライトアップ木島櫻谷Ⅱ―おうこくの線をさがしに 併設四季連作屏風」(泉屋博古館東京(旧・泉屋博古館分館)) 

展示風景より、木島櫻谷《柳桜図》(1917)泉屋博古館東京

 東京・六本木の泉屋博古館東京で、企画展「ライトアップ木島櫻谷Ⅱ―おうこくの線をさがしに 併設四季連作屏風」が5月18日まで開催されている。レポート記事はこちら

 本展は、日本画家・木島櫻谷(1877〜1938)の「四季連作大屏風」や、櫻谷が影響を受けた江戸時代の円山四条派の画家に焦点を当てたもの。櫻谷は明治後半から昭和前期まで、文展・帝展で活躍した京都日本画壇の代表的存在。京都画壇の重鎮・今尾景年(1845~1924)に写生を学び、徹底した写生を基礎に、卓越した技術と独自の感性によって叙情的で気品ある画風の作品を数多く生み出した。京都の伝統を継承しながら、西洋画の要素をも取り入れたスタイルが大きな特徴だ。

 櫻谷の絵画表現の特質をライトアップする展覧会シリーズ「ライトアップ木島櫻谷」の第2弾となる本展では、《かりくら》や《唐美人》をはじめとする櫻谷の人物画にスポットをあてるとともに、まさしく山のように遺された櫻谷の写生帖をいつもより増量して展示している。

会期:2024年3月16日〜5月12日
会場:泉屋博古館東京
住所:東京都港区六本木1-5-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:11:00〜18:00(金〜19:00) ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1000円 / 大学・高校生 800円 / 中学生以下無料

「第18回shiseido art egg」(資生堂ギャラリー

展示風景より

 資生堂ギャラリーでは、第18回「shiseido art egg」に入選した、大東忍、すずえり(鈴木英倫子)、平田尚也の3名の個展を開催。その第2期展として、すずえり(鈴木英倫子)の個展が5月18日まで行われている。レポート記事はこちら。

 すずえりは、ピアノや自作の電子回路などを連動させた装置を用いてインスタレーションや即興演奏を手がけ、音やそれを媒介する通信技術の表象に物語性を見出そうとする作家だ。同展では、Wi-FiやGPSといった現代の通信技術の基礎を生み出した発明家でハリウッド女優のヘディ・ラマー(1914〜2000)の生涯にフォーカス。「通信」というテーマを通じて、社会の在り方や女性の生き方について考えるものとなる。

会期:[第2期展 すずえり]4月16日~5月18日
会場:資生堂ギャラリー
住所:東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
開館時間:11:00~19:00(日祝〜18:00) 
料金:無料

 「リチャード・タトル『San, Shi, Go』」(小山登美夫ギャラリー 京橋)

十三 13 2024 spray paint, pine wood, plastic, paper, nail 27.6 × 27.8 × 14.0 cm © Richard Tuttle

 小山登美夫ギャラリー京橋で、リチャード・タトルによる個展「San, Shi, Go」が5月17日まで開催されている。インタビュー記事はこちら

 リチャード・タトル(1941〜)は、現在ニューヨークとニューメキシコを拠点に活動。絵画を解体するようにキャンバスをカットし壁に展示した「クロス・ピース」、ワイヤーとその影、ドローイングの線で構成した「ワイヤー・ピース」などの初期の代表作をはじめ、ドローイングともペインティングとも彫刻とも言えるジャンルを超えた自由な表現は、つねにアートシーンを刺激し次世代にも影響を与えてきた。

 現在、83歳のタトルは、約60年のキャリアを築きながら、いまなお先鋭的な探究心を持ち制作を続けている。作家にとって同廊における7年ぶり5度目の個展となる本展に際して発表された最新作などをぜひチェックしてほしい。

会期:2025年4月4日~5月17日
会場:小山登美夫ギャラリー 京橋
住所:東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 3階
電話番号:03-3528-6250
開館時間:11:00~19:00
料金:無料

 「三鷹天命反転中!!──荒川修作+マドリン・ギンズの死なないためのエクササイズ」(三鷹市美術ギャラリー) 

三鷹天命反転住宅 外観 撮影=加藤健 提供=荒川修作+マドリン・ギンズ東京事務所)

 三鷹市美術ギャラリーで「三鷹天命反転中!!── 荒川修作+マドリン・ギンズの死なないためのエクササイズ」が5月18日に終了する。

 荒川修作(1936〜2010)は1950年代後半から日本で芸術家として活動を開始し、瀧口修造のアドバイスもあり1961年にニューヨークに渡る。翌年、公私ともにパートナーとなるマドリン・ギンズ(1941〜2014)と出会い、協働で様々な表現活動を行う。

 本展では、アーティストや詩人としてキャリアをスタートした荒川とギンズが三鷹天命反転住宅にいたるまでの活動の軌跡を振り返り、なぜ・どのようにして三鷹にふたりの設計した三鷹天命反転住宅が誕生したのかを紐解く。さらにその後のプロジェクトとして荒川とギンズが三鷹市内で計画していた《大沢・野川プロジェクト》を世界初公開している。

会期:2025年3月22日~5月18日
会場:三鷹市美術ギャラリー
住所:東京都三鷹市下連雀3-35-1(CORAL5階)
電話番号:0422-79-0033
開館時間:10:00~20:00(入館は閉館の30分前まで)
料金:一般 1000円 / 65歳以上・学生(大・高)500円 / 中学生以下 無料

「ブラチスラバからやってきた!世界の絵本パレード」(千葉市美術館

展示風景より

 千葉市美術館で、企画展「開館30周年記念展 ブラチスラバからやってきた!世界の絵本パレード」が5月18日まで開催中。レポート記事はこちら

 BIBの通称で親しまれる「ブラチスラバ世界絵本原画展(Biennial of Illustrations Bratislava)」は、スロバキア共和国の首都・ブラチスラバで2年ごとに開催される、世界最大規模の絵本原画コンクールだ。

 本展は、2023年に開催された「BIB 2023」(第29回展)の受賞作品とともに、日本代表として選出された10組の作家の作品や制作における資料を展覧。加えて、作家へのインタビューなどを通して明らかとなった創作の背景を、関連作品および資料を交えて紹介するものだ。また、2005年からブラチスラバ世界絵本原画展を継続的に紹介してきた同館の歴史を振り返る展示にもなっている。

会期:2025年3月22日~5月18日
会場:千葉市美術館
住所:千葉県千葉市中央区中央3-10-8
電話番号:043-221-2311
開館時間:10:00~18:00(金土は~20:00) (入場は閉館の30分前まで)
料金:一般 1200円 / 大学生 700円 / 小・中学生、高校生 無料

 「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」(ポーラ美術館

展示風景より、草間彌生《無限の鏡の間-求道の輝く宇宙の無限の光》(2020)

 ポーラ美術館で「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」展を5月18日まで見ることができる。レポート記事はこちら

 本展では、近代から現代までの美術家たちが獲得してきた「色彩」とその表現に注目し、色彩論や色を表現する素材との関係にふれながら、色彩の役割についてあらためて考察する。また初公開となる10点の作品を加え、ポーラ美術館の名品を中心に印象派から現代美術までの展開を紹介。

 チューブ入りの油絵具を巧みに扱い、様々な色彩によって視覚世界を再構築した19世紀の印象派や新印象派をはじめ、20世紀のフォーヴィスムの絵画や抽象絵画、そして色彩の影響力によって見る者の身体感覚をゆさぶる現代アートにいたる近現代の色彩の歴史を、おもに絵画や彫刻、インスタレーションによって読み直すことができるだろう。

会期:2024年12月14日~2025年5月18日
会場:ポーラ美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
電話番号:0460-84-2111 
開館時間:9:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで 
休館日:会期中無休
料金:一般 2200円 / 大学・高校生 1700円 / 中学生以下 無料

 「玉山拓郎: FLOOR」(豊田市美術館) 

展示風景より

 愛知・豊田市の豊田市美術館で美術家・玉山拓郎の大規模個展「玉山拓郎: FLOOR」が5月18日まで行われている。レポート記事はこちら

 玉山拓郎は絵画制作を出発点としながら、早くから立体的な造形や光、映像、音を組みあわせたインスタレーションを展開してきた。日常的にもちいられる机や電球が大地や星々のようにも見えるなど、玉山の作品はうちなる場(In-terior)と外界(ex-terior)の関係へと想像をひろげつつ、大小のスケールの振れ幅に両者の境界を問うてきた。とはいえ同時に、玉山の作品は明確な境界線を引くのではなく、異なるものが流通し、また衝突する不可分で動的な領域=界面として現出する。 

 本展は、基本的にはただひとつのインスタレーションのみで構成される。豊田市美術館の特徴的な展示空間に、建築とも、構造物とも、あるいは立体作品や彫刻ともつかない巨大な物体を貫入させる。日の光の移ろいによって刻々と変化する展示室に、ひとつのインスタレーションが様々なかたちであらわれる。

会期:2025年1月18日〜5月18日
会場:豊田市美術館
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
開館時間:10:00〜17:30 
料金:一般 1200円 / 高校・大学生 1000円 / 中学生以下 無料

「スピードの物語」(瑞雲庵)

メインビジュアル Design: Tomohiko Kuniyoshi

 京都の瑞雲庵にて、「スピードの物語」展が5月18日まで行われている。

 本展は、公益財団法人西枝財団の「瑞雲庵における若手創造者支援事業」の一環として行われたもの。西枝財団は、次世代の芸術・文化を担う若者の育成を目的に毎年2名の若手キュレーターを公募し、彼らによる展覧会の企画・運営をサポートしている。本展は、2025年度に採択されたプロジェクトのひとつだ。

 参加作家は、荒木悠、シネマ58、原田裕規、川田喜久治、カワニシユウキ、小津安二郎、ユ・ソラ高山明、瀧健太郎、トモトシ、津田道子、八島良子など。時間、労働、精神的健康、そして資本主義がもたらす影響をテーマにした作品の展示を通じ、時間の遅延や回復の可能性を探る。

会期:2025年4月18日~5月18日
会場:瑞雲庵
住所:京都市北区上賀茂南大路町61-1
開館時間:12:00〜18:00
休館日:火〜木
料金:無料

今週開幕

「創造と破壊の閃光」(GYRE GALLERY

展示風景より

 東京・神宮前のGYRE GALLERYで、「創造と破壊の閃光」がスタートした。レポート記事はこちら

 本展は、アーティスト・草間彌生(1929〜)と3人の現代作家、三島喜美代(1932〜2024)、坂上チユキ(1961〜2017)、谷原菜摘子(1989〜)が作品を通じて対話を行うもの。本展のタイトルである「創造と破壊の閃光」とは、フランスの哲学者フェリックス・ガタリにようテキスト「草間彌生の豊饒な感情」からの引用だ。会場は、4人の作家による作品が一度に目に入るような素直な構成となっている。

会期:2025年5月14日〜6月15日
会場:GYRE GALLERY
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
電話番号:0570-05-6990(ナビダイヤル、11:00〜18:00) 
開館時間:11:00〜20:00 
休館日:会期中無休 
料金:無料

 「DESIGN MUSEUM JAPAN展2025」(国立新美術館) 

メインビジュアル

 国立新美術館で「DESIGN MUSEUM JAPAN展2025~集めてつなごう 日本のデザイン~」が5月15日に開幕した。

 本展は、NHKで放送してきた「デザインミュージアムジャパン」と歩調をあわせ、展示を通じて地域の魅力を発信し、日本全体にひとつの「デザインミュージアム」を浮かび上がらせようとする取り組みだ。今回の展示は、2024年度にリサーチされた8つの「デザインの宝物」を中心に展覧会が構成されている。

 菊地敦己(グラフィックデザイナー)「『ほうろうの生活用品』〈デザイナーなし〉の温かいデザイン」(栃木)、宮永愛子(現代美術作家)「『ヒラギノフォント』明朝体と京都の新しく古い関係」(京都)、塚本由晴(建築家)「『氷室』かき氷を生んだランドスケープ」(天理、奈良県)、佐藤卓(グラフィックデザイナー)「『スナック』〈間〉をつなぐ本能のデザイン」(宮崎)らが紹介されている。

会期:2025年5月15日~5月25日
会場:国立新美術館
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~18:00(5月15日は15:00〜、金〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:5月20日
料金:無料

「上村松園と麗しき女性たち」(山種美術館

上村松園 蛍 1913(大正2) 絹本、彩色 山種美術館蔵

 山種美術館で、生誕150年を記念した特別展「上村松園と麗しき女性たち」が5月17日に始まる。

 「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願」と語った日本画家・上村松園。清らかで気品に満ちた松園の作品は、いまもなお多くの人々を魅了し続けている。2025年に松園が誕生して150年を迎えることを記念した本展では、名品を取り揃え、その画業をたどるとともに、松園と同時代の画家から現在活躍中の若手作家にいたるまで、女性の姿を描いた作品を紹介。

 展覧会では、画業の初期から晩年までの22点の優品を通じて、近代日本を代表する女性画家・上村松園の魅力に迫る。あわせて、同じく2025年に生誕130年を迎える小倉遊亀、生誕120年の片岡球子など、様々な画家による麗しき女性たちの姿を描いた作品を見ることもできる。

会期:2025年5月17日~7月27日
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月(ただし、7月21日は開館)、7月22日
料金:一般 1400円 / 大学・高校生 1100円 / 中学生以下 無料(付添者の同伴が必要)