2025.6.30

「⺠藝誕生100年―京都が紡いだ日常の美」が京都市京セラ美術館で開催。民藝と京都の関係性に肉薄

民藝の100年を記念する特別展「⺠藝誕生100年―京都が紡いだ日常の美」が京都市京セラ美術館で開催される。会期は9月13日~12月7日。

旧上田恒次家住宅 撮影=原田祐馬
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 民藝の100年を記念する展覧会「⺠藝誕生100年―京都が紡いだ日常の美」が京都市京セラ美術館で開催される。会期は9月13日~12月7日。

河井寬次郎 白地草花絵扁壺 1939 京都国立近代美術館蔵

 思想家の柳宗悦(1889~1961)、陶工の河井寬次郎(1890~1966)、濱田庄司(1894~1978)が京都に集うことで始まった「民藝」運動。江戸時代後期に木喰上人の手によって掘られた「木喰仏(もくじきぶつ)」の調査旅行をするなかで議論を深め、1925年「民衆的なる工芸=民藝」という言葉が生まれた。この「民藝」という言葉が誕生して100年を迎えるにあたり開催されるのが本展だ。

河井寬次郎 象嵌鉢 日本⺠藝館蔵

 展覧会は6章構成。序章「『⺠藝』という言葉の誕生~木喰仏の発見」では、1925年に柳、河井、濱田らによる木喰仏調査の旅中に生まれた「民藝」の原点を探る。

木喰上人《地蔵菩薩像》1801年 日本⺠藝館蔵

 第1章「上加茂⺠藝協団~新作⺠藝の制作集団」は1927年に京都・上賀茂の地に青田五良、黒田辰秋等によって設立された制作集団・上加茂民藝協団を取り上げる。民藝運動の目的のひとつは、現代の生活用品を新たに産み出すことでもあった。

黒田辰秋 拭漆欅真鍮金具三段棚 1927 河井寛次郎記念館蔵

 第2章「三國荘~最初の『⺠藝館』」は、1928年の御大礼記念国産振興東京博覧会に出品した「民藝館」を契機に設立された静岡・浜松の日本民藝美術館と、その後、大阪・三国に移築された「民藝館」を特集。移築後は「三國荘」として民藝関係者のサロンとなった。

馬ノ目皿 19世紀 アサヒグループ大山崎山荘美術館蔵

 第3章「式場隆三郎(1898—1965)と自邸」では、精神科医としての医業の傍ら、木喰仏の調査などの運動の当初から関わった式場隆三郎を特集。柳や濱田などが設計に関わった民藝の代表的建築とされる自邸を紹介する。

式場邸 一階応接間 撮影=川島智生

 第4章「日本全国の蒐集品」は、柳宗悦らによる北海道から沖縄まで日本全土におよぶ蒐集の旅を紹介。そして第5章「⺠藝と『個人作家』」では、河井寬次郎、濱田庄司、バーナード・リーチ、富本憲吉、芹沢銈介、棟方志功といった個人作家が民藝運動において果たした役割を考える。

水色治芒雁紋様紅型衣裳 19世紀 日本⺠藝館蔵
霰釜 18世紀 日本⺠藝館蔵
富本憲吉 色絵「福貴」角筥 1936 日本⺠藝館蔵

 そして最後となる第6章「⺠藝と京都」では、京都の地と人々との関わりから「民藝」の思想が紡ぎだされ、運動が展開していったことを踏まえ、⺠藝と京都の関係をピックアップする。

黒田辰秋 螺鈿くずきり用器/岡持ち 1932 鍵善良房蔵 撮影=伊藤信

 近年、様々な館で展覧会が開催され、再び注目が高まっている「民藝」。本展は、京都という土地と民藝の関係にスポットを当てたものとして、また異なる角度の視座を得られるものになりそうだ。