1階フロアでまず目に入ってくるのは、20世紀イタリアの芸術運動アルテ・ポーヴェラのアーティスト、ミケランジェロ・ピストレットの《Color and Light》(2024)だ。彼の代表作であるこのミラーペインティングは、鏡面の金属板に映り込んだ鑑賞者が作品と周囲の環境の一部となり、思考を刷新することを促される。ティファニーを象徴するブルーを取り入れた本作は、ジュエリーの輝きに包まれた一幅の肖像画を見せてくれる。
1階フロア。中央の壁面にミケランジェロ・ピストレットの《Color and Light》(2024)が展示されている 1階エレベーターホールには、1990年代ロンドンに起こったYBAs(ヤング・ブリティッシュ・アーティスト)の一員で、現代のアートシーンでもっとも注目される作家のひとり、ダミアン・ハーストの《Tiffany Superb》(2024)が展示されている。ブルーを背景に飛び交う蝶は、彼の幼少期の妄想によってつくられた非現実の昆虫であり、ハーストが一貫して探求するテーマ──美、死、変容──を示唆する。儚い命を終えても残るその羽の模様は、自然界のあらゆる生物の唯一性を象徴する。
1階のエレベーターホールにはダミアン・ハーストの《Tiffany Superb》(2024)が展示されている B1階エレベーターホールにはアメリカ人作家、サラ・ジーの作品が展示されている。NYを拠点とする彼女は、ファウンドオブジェクトや日常的な素材を集積して緻密に構成し、独自の法則性に従って秩序とカオスが混然となったインスタレーションを制作してきた。本作では、通常の絵画を超越した多種多様な素材や技法を駆使。その質感は、物質、空間、時間をすり抜け、記憶を駆け巡る知覚の旅を反映している。
2階のVICルームのひとつには、ニューヨークのブルックリンを拠点とする日本人作家ススム・カミジョウによるグラフィカルな抽象画《The Chill》(2021)が展示され、作品のモチーフとフラワーベースに飾られた花がリンクしている。フランシス・ベーコンに影響を受けたカミジョウは、彼が繰り返し描く様式化されたプードルを、「素早い決断」と呼ばれる、日本の書道に由来する直感的な技法で捉え、気高く威厳に満ちた姿に変貌させている。
2階VICルーム、ススム・カミジョウの《The Chill》(2021) 2階のウォッチ・ギャラリーには、ブラジル出身のアーティスト、ヴィック・ムニーズの作品が展示されている。ムニーズは、チョコレートやダイヤモンド、キャビア、おもちゃなど意外な素材を使って、美術史上の名作を再構築し、それを写真に定着させる手法で高く評価されてきた。日本美術に魅了されたことでも知られるクロード・モネの「睡蓮」を引用したトリプティクの本作は、ティファニーのアーカイブから選ばれた、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのジャポニスム様式の懐中時計と響きあう。
ホームコレクションとカフェのある4階では、新表現主義を代表するアメリカ人画家、ジュリアン・シュナーベルによる絵画とテーブルセットが存在感を放つ。1950年代から80年代にかけて、アンディ・ウォーホルらアーティストが、ティファニーとのコラボレーションにより、人生の特別な機会を祝うテーブルを制作した。シュナーベルはこの伝統を受け継ぎ、著名なゲストたちをもてなすディナーを想定したインスタレーションを制作。背景には彼のシグネチャーである割れた陶器の皿を用いた点のペインティングが展示されている。破壊的でありながら豊かな人間味を感じさせる本作のテクスチャーは、祝祭的かつ親密に、このラグジュアリーなストアの体験を引き締めていた。
4階、ジュリアン・シュナーベルの《テーブルセット》(2022)と《Lake in the Engadin》(2025)