2025.8.13

「爆心へ」が自主企画を東京で開催。戦後80年、映像とトークで「爆心」を考える

アーティストとキュレーターから構成される「爆心へ」による上映イベントやトークが、8月15、16日に東京・日比谷で開催される。

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 アーティストとキュレーターから構成される「爆心へ」による企画が、8月15、16日に東京・日比谷で開催される。

 「爆心へ」は、人類最初の核実験であるトリニティ実験、そして広島と長崎への原爆投下から80年を迎えるにあたり、アーティストの新井卓、川久保ジョイ、小林エリカ、竹田信平、キュレーターの三上真理子により発起されたプロジェクト。「爆心」を人間だけでなくすべての生命に対する残虐行為の中心として定義し「すべての 〈爆心〉は地続きである」「〈爆心〉はだれにも所有されない」「すべての〈爆心〉は等しく重みを持つ」という3つのステートメントを提示しながら、芸術、行動、研究、物語を通して「爆心」を語るオルタナティブな形式と方法論を探究している。

「爆心へ」のロゴマーク

 「爆心へ」はこの夏、バス「爆心へ」号で広島、長崎、東京をまわり作品制作や上映企画を実施。15、16日には東京の日比谷図書文化館の地下1階コンベンションホール(大ホール)で「<爆心>をめぐる映像作品上映とトークセッション」 を開催する。

竹田信平による《アンチモニュメント・エクステンデッド・VRワークショップ》 (c)Hal Xing, 2025
「爆心へ」の長崎の相談所 (c)Hal Xing, 2025

 上映する作品は、直接経験したことのない暴力をいかにして語り得るのか、制作者たちが熟考し見る者に問いかけるものだ。美術館やギャラリーでは観客が移動しながら見る映像作品を、今回はあえて、映画館のような「定点」で鑑賞することで、目の前の作品と静かに向き合う時間を取り戻す試みとなる。加えて、映像作品の上映とともに、小林、竹田、三上、アーティストの川久保ジョイのほか、ゲストとして被爆者団体「武蔵野けやき会」会長の松田隆夫、アートコレクティブのBombshelltoe Collectiveを迎え、様々なトークを開催。

 また、ホール前のスペースでは映像作品、Phew+Dieter Moebius+小林エリカ「Radium Girls」(4分、2012)を上映。さらに広島、長崎を旅してきたバス「爆心へ」号内での展示の一部と、Hal Xingによる旅の記録、旅の途中で制作してきた作品の一部、爆心メンバーたちの推薦図書などを、自由に観覧可能となる。

「爆心へ」号 (c)Hal Xing, 2025
新井卓によるサイアノタイプの折り鶴 (c)Hal Xing, 2025

 16日は、ミュージシャン・寺尾紗穂の企画・選曲、小林の脚本による朗読歌劇「女の子たち風船爆弾をつくる」映像版の上映トークセッションを開催。戦争中に動員され、日比谷の東京宝塚劇場で風船爆弾をつくった少女たちの物語を、ゆかりの地で鑑賞することができる。加えて、風船爆弾の開発をおこなった旧陸軍登戸研究所の歴史を調査・ 保存してきた明治大学平和教育登戸研究所資料館学芸員・塚本百合子をゲストに、寺尾、小林とのトークも開催される。

 また、前日の15日にはバス〈爆心へ〉号に乗り、80年目の8月15日、女の子たちの軌跡をともに巡るツアーも開催。運転手は新井、バスガイドは小林が務める。当日は事前予約者を優先に、受付にて先着順に時間を案内。なお「<爆心>をめぐる映像作品上映とトークセッション」のチケット所有者のみ参加可能となる。