2025.10.9

ネザーランド・ダンス・シアター(NDT 2)が約20年ぶりに再来日。気鋭の才能による珠玉の3作品を目撃せよ

オランダ・ハーグを拠点とし、国際的に活動するダンスカンパニーNDT(ネザーランド・ダンス・シアター)。その来日公演が、KAAT 神奈川芸術劇場〈ホール〉(11月21日・22日)と愛知県芸術劇場大ホール(11月24日)で開催される。

Folkå ©Rahi Rezvani
前へ
次へ

 才能豊かな気鋭の振付家と世界中から集まった選りすぐりのダンサーたちによって共同制作を行い、オランダ国内外で上演を続けているダンスカンパニー「NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)」。その来日公演が、KAAT 神奈川芸術劇場〈ホール〉(11月21日・22日)と愛知県芸術劇場大ホール(11月24日)で開催される。

 今回来日する「NDT 2」は、1978年に当時の芸術監督イリ・キリアンにより設立され、新進気鋭のダンサーで構成されている。当初、NDT 2は優れた才能あるダンサーがNDT 1に進むための育成プログラムとみなされていたが、世界的振付家・ダンサーらの指導により、NDT 2も独自のレパートリーを持ち、国内外で幅広くツアーを行う独立したカンパニーに発展した。その強靭な肉体をもって挑むのが、本公演の3作品だ。

『Folkå』(フォルカ)

Folkå ©Rahi Rezvani
Folkå ©Rahi Rezvani

 1作品目は、スペイン出身の振付家で、ダンスをはじめ舞台芸術の様々な分野で活躍するマルコス・モラウ振付の『Folkå』(フォルカ)。モラウが手掛けた作品は、これまでに30ヶ国以上の主要フェスティバルで上演されてきた。また、スペインの国家ダンス賞(National Dance Award)を最年少で受賞し、ドイツのダンス雑誌『Tanz』の2023年最優秀振付家として表彰された実績を持つ。また今年春からは常任振付家に就任。NDT のほか多数のバレエカンパニーから作品を委嘱されるなど、国際的に注目を集める振付家だ。

 本作は、ブルガリア民謡をはじめとする力強い歌声、鐘やドラムのリズム、伝統的な衣裳や化粧などの民族的な要素を強く想起させるいっぽうで、荒々しいうねりを生み出すエネルギーあふれる群舞と、美しい舞台照明が、現代性を鮮やかに描き出す。23年12月にNDT よりオンライン配信されたことで、さらに多くの反響を呼んだ本作をぜひ日本の劇場で目撃してほしい。

『FIT』(フィット)

FIT ©Rahi Rezvani
FIT ©Rahi Rezvani

 2作品目は、スウェーデン出身の振付家で独自の演出スタイルで世界的に注目を集めるアレクサンダー・エクマンによる『FIT』(フィット)だ。エクマンは24年のパリ・パラリンピックの開会式の演出・振付監督を担い、話題を呼んだ存在。

 本作では、デイヴ・ブルーベック・カルテットによるジャズの名曲「Take Five」を用いた、エクマンならではのユーモアとリズム感が際立つダンスを振付。タイトルが示す「調和」という言葉を起点に、社会や環境と私たちとの関係性や在り方について、様々な問いを投げかける。舞台批評サイト「Theaterkrant」では「一見軽快ながら巧妙かつ多層的」と評されている。

『Watch Ur Mouth』(ウォッチ ユア マウス)

Watch Ur Mouth ©Rahi Rezvani
Watch Ur Mouth ©Rahi Rezvani

 3作品目は 、イギリスの振付家ボティス・セヴァによる『Watch Ur Mouth』(ウォッチ・ユア・マウス)。ヒップホップやコンテンポラリーダンス等の領域を超えて活躍するセヴァは、自伝的要素を取り入れた社会へのメッセージを追求している。英国の演劇・オペラ・舞踊において際立った功績を残した作品や人に贈られるローレンス・オリヴィエ賞で最優秀新作ダンス作品賞(2019)受賞やシャネルが文化芸術界の革新を促進するために新設した「シャネルネクストプライズ」(2021)を受賞するなど、若手振付家として、近年頭角を現している振付家だ。

 『Watch Ur Mouth』は、情報と批判に晒される現代におけるプレッシャー、外からの評価や期待との葛藤に対する深く個人的な考察を描くもの。日々戦っている人々へ、自身の強さと周囲にある支えの存在を忘れないでほしいというメッセージが込められている。

 なお、日本初紹介となる2 人の振付家を含む今回の日本独自の作品キュレーションは、NDT芸術監督のエミリー・モルナーと愛知県芸術劇場芸術監督であり、Dance Base Yokohamaアーティスティックディレクターの唐津絵理によるもの。今回の公演にあたり唐津は「昨年のNDT 1来日に続き、今年もNDT を日本でご紹介できることを大変嬉しく思います。今回は、NDT 2と世界が注目する振付家たちによる、多様なスタイルの3作品を紹介します。クラシックの技巧に裏打ちされた圧巻のテクニック、エネルギッシュでパワフルな身体表現、ヒップホップの要素なども取り入れながら、ジャンルを越えてダンスの現在地を鮮やかに示す舞台ばかりです。新たな芸術との出会いを、ぜひ劇場でご体感ください」とのコメントを寄せている。

 若き才能による珠玉の3作品を、ぜひその目で確かめてほしい。